増加する外貨準備高
ここ数日、外貨準備高が1兆ドルを超えて、過去最高を更新しているというニュースを何度か目にしている。下落傾向にあるドルだけを持っていて、日本の財政は大丈夫なのだろうか?

Money
2000年度以降の準備高は、財務省が月末ごとに発表している「外貨準備等の状況」(http://www.mof.go.jp/1c006.htm)でみられる。
2008年3月末で、1兆0155億8700万ドル。3月末のレートはドル=99.71円だったから、円換算でおよそ115兆2518億円。
半年前の2007年9月末で9456億0100万ドル。9月末のレートはドル=115.35円。この時点での円換算でおよそ109兆0751億円。
外貨準備高は699億8600万ドル増えているのに、円換算では6兆1767億円しか増えていない。
この間、1ドルが約16円安くなっているので、その分目減りしてしまった事になる。
実を言うと、外貨準備高の統計資料を見てもドル建てで公表されているという以外に、通貨の内訳を知る事はできない。だから全てを米ドルで持っているとは断定できないが、おそらくは米ドル建て、ドル債券なのだろうと思う。
運用方針らしきものは、「外国為替資金特別会計が保有する外貨資産に関する運用について」(財務省)(http://www.mof.go.jp/jouhou/kokkin/gaitametokkai_170404.htm)で発表されてる。
外貨準備を一般的に言われているように、ほとんど米ドルで持っているとしたら、好ましい状態ではない。
世界経済に占めるGDP比率は、米国が50%位、日本が10〜15%位だから、ここから考えてもSDRの通貨ウエイトは合理的に思える。世界経済の50%を占めているのは大きいけれど全ての外貨をそのドル建てで持っておく事は行き過ぎだ。今では、ユーロがある程度定着しているから、その一部をユーロ建てにしておくべきだろう。
外貨準備等の状況を読んでいて気になった事が2つある。一つは、SDRという言葉。もうひとつは、オプションのポジションを記入する欄がある事。この2つからだけでも対策が考えられる。
SDRについて
SDRは、IMFが加盟国の既存の準備資産(公的金保有、外貨、IMFのリサーブポジション)を補完するために外貨準備資産として創設したもので、SDRの価値は主要国通貨のバスケットに基づいて決められるとある。
「特別引出権 (SDR)(ファクトシート)」(IMF)(http://www.imf.org/external/np/exr/facts/jpn/sdrj.htm)
これによると、SDRバスケットの各国通貨のウエイト(%)は次の通り、
米ドル 45
ユーロ 29
日本円 15
英ポンド 11
この比率は、世界経済に占めるGDP比率と近いし(ウエイトを決める際に考慮されているのだと思う)、SDRはIMF加盟国であれば互いに通貨と交換できるのだから、先の財務省の運用方針にも合っている。やはり、外貨準備の半分くらいは、SDRにしておくのが合理的なように思える。
個人向けには、株、土地、現金に分ける資産三分法だの、現金は外貨も持っておきましょうなどと言われている。資産三分法や外貨を持つ事は否定しないけれど、どちらかというと機関投資家くらいの規模で考えるべき事だと思う。
そうした意味で国が100兆円を超える大金をたった一つの通貨で持っているのはやはり異常だから、積極的に通貨を分散させるべきではなかろうか。ユーロ建てやSDRでの準備高を増やすべきだと思う。
通貨オプション
ざっと見た限りでは公表されて以来、オプションを持った事が無いようだ。オプションは通貨をある値段で売る権利や買う権利の売買をするもの。外貨準備では、基本的に通貨を持っているから、カバード コール等の方法で、目減り分をヘッジする事ができる。
オプションはデリバティブの一種で投機手段にもなりうるが、包丁と一緒で、ちゃんと理解した上で使えば、危険なものではない。
理論上は為替レートがどう動いても円換算であまり上下しないようにする事も可能だろうし、為替の動きを100%ヘッジしなくても3分の1程度は常にヘッジしておくという事は、技術的に可能だと思う。
ただし、オプションのポジションを毎月公開すると、日本政府としての為替見通しが公表されてしまうので、オプションについては、公表時期を半年後等にずらしてしまう事も一つの方法だと思う。
いずれにせよ、外貨準備については、米ドル建て債券の一本槍から、SDRやオプションを組み合わせて、様々な通貨の上下動の動きを吸収しつつ安定した運用を行うようにすべきだと思う。